


いいえ
しかし、臨時のオランダ領事はルールに厳格な人だったんだ。彼は直属の上司、リガ在住のバルト三国駐在オランダ大使デ・デッケルから、キュラソー島に行くのにビザは不要だが、島には見るべきものがないだろう、というメッセージを受け取っていた。灯台か……岩でもみるのかね?ほかには小さなコテージがいくつか。それからポケットに一銭も入れずにやってきた新参者には、絶対に移住の許可を与えない島の総督くらいだろう。
それに、ソ連はすでにリトアニアで権力を握っていて、すべての大使館と領事館を閉鎖し、すべての外国人は直ちに国外退去するようにと命じているのだよ。
ヤン・ズヴァルテンディクの任期はあと2ヶ月もなかったし、その後は妻と3人の子供をつれてオランダに帰るのだ。ナチスに占領されているオランダに。とはいえ、ズヴァルテンディクはユダヤ人じゃないし、深刻な危険に遭遇することもない。「少年、すまないね」と、領事館のドアを閉めながらズヴァルテンディクはニーサンに言った。「僕は少年じゃない、23歳だ!ソ連はヴィリニュスのイェシーバをもうすべて閉鎖してしまったじゃないか。テルシェ・イェシーバだってもうすぐそうなるんだ。そうしたら、学生も先生もみんな連れていかれるんだぞ!シベリアに連れていかれるか、すぐさま殺されるんだ!」
しかし、領事館のドアは閉じられたままだった。